モロ(王子窯モロ)
王子窯モロは、丘陵尾根近くの南向き斜面の、東西に細長い幅20mほどの平坦面山際に建てられた本業焼(陶器)生産の工房建物である。明治33年(1900)に木造二階建で建造されたと伝えられる。また、大正2年(1913)には南側の下屋の天井を高く拡張したものとみられる。王子窯では18世紀後半から昭和43年(1968)まで11房からなる連房式登窯が使用されていた。昭和43年以降は重油窯を使用した。 建物の規模は、間口20間(実長10間(20.1m))、奥行6間(実長3間(5.79m))で東西に細長く、他の事例に比べて少し大きいことが特徴である。西、北、東面は厚い土壁をめぐらし、南面の四ヶ所に小窓がつくのみで昼間でも薄暗い。 構造は小屋組みが和小屋構造で、木造総二階の母屋に南側には下屋が付属する。一階には一基のモーターがあり、プーリーやベルトを介して縦型(バケツ形)土練機やロクロの動力を賄っている。また、大型の真空土練機もみられるなど、近代の窯業民俗を伝える貴重な機械・道具が残存し、これらも建物とともに文化財としての価値を有している。 二階へは一階天井にある登り口に梯子をかけて登るか、モロ西側の坂道を登った所にある西側妻面の出入口を利用でき、ここから製品の搬出入が可能となっていた。現在、二階は倉庫となっているが、以前は素地の施釉及び乾燥場として使用されていた。
一階で成形、二階で半製品(焼成前製品)の施釉・乾燥・保管を行い、焼成を行う窯炉(登窯)までを機能的につなげる工夫がなされている「王子窯モロ」は、瀬戸市内では最古級のものであり、文化財的価値は高い。