シマ・シマ馬・郷祭り

 瀬戸市域のかつてのムラは、その中がシマと呼ばれるいくつかの組織に分かれている。シマは「島」と表記され、それぞれのシマは一定の独立性を持っていた。ムラの祭礼は、シマの自立性を示す機会でもあり、氏神に献馬奉納する標具祭り(警固祭り)は、「郷祭り」とも呼ばれ、シマを単位にして行われた。シマから出す飾り馬を「シマ馬」と称したりする。
  現在、瀬戸市域の郷祭りの標具が祭礼で用いられるのは、菱野と本地、今村のみとなっている。菱野は、3年に一度おでくを標具とする祭礼とするが、おでくの出ない年に、地区内の6つのシマに残されているシマの標具を順番に1基づつ出すことにしている。本地は、かつて12のシマがあったが、現在は坂上、西原・高根、西本地、東本地の4地区が輪番制で当番ジマを毎年受け持ち、ムラの金網半掲・底抜柄杓の標具とシマ(旧東原山・中切・坂上等)の標具を交互に出している。
 今村の4シマは、氏神である八王子神社の秋季例祭の折に各シマから飾り馬を献馬しており、古来よりの郷祭りの形態が残っている。標具は、鞍の上に木組みの勾欄を載せ、その周囲を標具巻きで巻いて、上に杉葉をのせて各シマで異なった飾りつけを行う。寺山は白・緑・赤の御幣の束を多くつけ、市場は白・紫・黄・緑・赤の御幣の束を多くつけ、標具としている。川西は南北で2頭献馬し、北は「八王子」と記した高札はんげに白2段の御幣の束と黄白赤の御幣の束各3本、南は緑・黄・紺・白・赤の御幣の束を載せている。北脇は「八王子」と記した高札はんげとその左右に日章旗・日の丸を配す(飯田2001)。市場は平成24年までで献馬を休止するなど変化を生じているが、毎年4頭の献馬がなされる秋祭りは瀬戸市で唯一の規模である。

参考文献
飯田淳史2001「今村」『瀬戸市史民俗調査報告書1 幡山・今村地区』瀬戸市

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